そして、手のひらにのせた丸いモノを差し出しながら、「これが何の実かご存じ?」となぜかヒソヒソ声。
ゴミ出し中の私は、眠い目をしばしばさせながら「トチノキでしょう。餅の原料になるけれど、つくるのはたいそう面倒らしいですよ。」とつられて密談のような声音で返事をした。
かの栃餅の原料であることにすこぶる感心しつつ、ご婦人はニマニマしながらその日の散歩途中に拾った実を、半分の三つ、私に手渡すと帰ってゆかれた。
私もニマニマしながら、頂戴したトチノキの実を玄関の下駄箱の上にかざった。ご婦人はつい最近、半世紀を共に過ごしたご亭主に先立たれたばかりだが、身近な植物観察は復活されたご様子。
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