2023/10/19

トフシアリの結婚飛行

 

トフシアリのオスアリ

トフシアリの雄がたくさん飛んでいるところを和泉市の中央公園で見た。芝生の広場の端でいくつかの集団を形成していて、少数だが雌も低いところを飛んでいた。見たのは10月の16日と17日、そして今日の19日のいずれも午後3時頃。18日だけは公園に到着したのが午後4時と遅かったせいかまったく見かけなかった。どの日も結構風があったが負けずに飛んでいた。

トフシアリの女王

女王の腹柄


最初は、ユスリカの群飛と思っていたが、何気なく手で捕まえてみると、見慣れない雄アリだった。帰宅して調べて、なんとかトフシアリにたどり着いた。ヒアリと同じ属。
働きアリの触角が10節なのでトフシアリというらしいが、女王は11節だし、オスアリは12節だ。アリを同定する検索表は、働きアリが中心なので、生殖虫についてはまあだいたいが私には分からない。

女王の触角(11節)

オスアリの触角(12節)


トフシアリなんてほとんど見る機会がなくて、近所では中学校の校庭の土を篩って、働きアリを数個体採集したことがあるが、何年も暇さえあれば来ているこの公園では確認したことがなかった。
ものすごい数のトフシアリの羽アリたちを見ていると、自分の日常の観察力が大変疑わしいものであることは重々知ってはいたが、さらにそれが極小サイズの節穴であることが目出度く認定されたような気がしてきた。
観察力がイモでも、ネットを数振ればたまには珍しいものが採れてうれしいのが虫採りなので大丈夫だ。

2023/10/15

寝具のダニ類を粘着紙で調査

 


自分が使っている寝具にいるダニ類を調べてみた。

10月に入ってなんか少し痒い気もしていたし。
寝具のダニ類は、一般的に敷布団に多い。
私が使用している敷布団(シングルタイプ、カバー付き)は使用歴5年くらいで、敷きパッドをかぶせて使用している状態だ。布団カバーは月に一回ほど掃除機をかけていたが、3か月ほど洗濯していなかった。敷きパッドは2週間に1回ほど洗濯していたので、その下はキレイとなんとなく思っていたような気がする。
敷きパッドを取り除いて、敷布団カバー上面に粘着ローラー(汎用円筒型粘着清掃器具)を押し付けて1分間ほど転がした。
次に塵が付いた部分の粘着紙を外して、実体顕微鏡で粘着面を観察してみた。
チリダニ科46個体、ツメダニ科3個体、トゲダニ科1個体が確認できた。

掃除機を使う頻度を増やして、吸い込みノズルをもう少しゆっくり動かして使うほうがよさそうだ

粘着紙に付いた状態のチリダニ科(乾燥した死骸)

粘着紙に付いた状態のチリダニ科(新鮮な死骸)


粘着紙に付いた状態のミナミツメダニ

粘着紙から外してプレパラートにしたミナミツメダニ

ミナミツメダニの顎体部

粘着紙に付いた状態のチトゲダニの一種

粘着紙から外したチトゲダニの一種。足がだいぶ無くなった・・・。

チトゲダニの一種の胴部後方

室内塵性のダニ類は、こういった寝具や、ソファー、床材といったところの人間と接触する表面でよく見られ、粘着紙などでも簡単にサンプリングできる。実体顕微鏡で個体数を調べるのなら、あらかじめ粘着紙に極細油性ペンで1cm間隔くらいで線を引いておくと数えやすい。

ツメダニ類は、一般的に他のダニ類や微小昆虫を食べて生活していて、生息密度が高くなると、ヒトも刺される機会が増えて問題化すると考えられている。とはいえ、どういう生息状況なら「皮膚のかゆみの原因」認定可能かということはよく分からない。
ツメダニ類に咬まれて痒いのは、Ⅳ型アレルギーと考えられる。なんであれ、アレルギーというものは個人差が大きく、原因物質の量と症状の程度に単純な関係を求めることは難しい。
個人的にはサンプリング方法がなんであれ、1平方メートル当たりの検出数が重要な目安になると考える。1個体くらいなら、多くの一般家庭でみられる問題になりにくい状況だと思うけれど、2~3個体なら微妙な感じで、新鮮な個体が4~5個体以上なら皮疹の原因になる可能性が濃いのではなんて思っている。この判断は経験的な感想で、科学的な根拠はない。
意外なことに、けっこうな生息密度でミナミツメダニが検出されていても、ご家族のだれもカユイなんていわないお宅もある。

自分の敷布団(約1.9平方メートル)の場合は、1平方メートルあたり約1.5個体だから、痒いことに関係しているのかどうかよく分からない感じだが、あまり増殖されても嫌なので、敷布団を念入りに掃除機掛けして、布団カバーも洗濯した。その後に同じように粘着紙でサンプリングして観察したら、ツメダニ類は確認できなくなった。

私の敷布団にいたツメダニ科は、すべてミナミツメダニ Chelacaropsis moorei Baker, 1949 だった。
ミナミツメダニは、記載時はフロリダのアメリカモモンガから見つかっていて、その後は熱帯地域を中心に貯蔵ニンニク、室内塵、鳥の巣などで記録されている。特にニンニクについての報文では、チューリップサビダニと一緒に見つかったことからミナミツメダニが益虫になる可能性が示唆されている。Chelacaropsis属は日本では1種しか知られていないけど、BioLib.czのサイトによれば世界に7種いて、表土やら鳥などからそれぞれ記録されている。

トゲダニ科については、チトゲダニの一種 Androlaelaps sp. だった。日本産ダニ類図鑑で調べるとホソゲチトゲダニ Androlaelaps casalis に似ているけれど、近似種がいくつかいて、私には種まで落とせそうにない。
ホソゲチトゲダニは、貯穀害虫類の天敵だったり、ワクモのような吸血性トゲダニ類も捕食するので益虫の面もあるらしい。
ホソゲチトゲダニは、ヒトの皮膚炎に関与しているとする海外の報文もあるけれど、ホントにヒトを加害しているのかという点は検証されておらず、強く警戒すべきダニ類とは思われない。

粘着紙によるダニ調査(市販されているキットもあるが)は、なんといっても清掃用粘着ローラー(元祖製品名はコロコロ?)くらいは大抵のご家庭に装備してあり、とても手軽に始めることができる。実体顕微鏡さえあれば誰でも観察までできるし、七面倒な「掃除機の室内塵からのダニ分離」をしなくて済むところも喜ばしい。粘着紙からダニを外してプレパラートにする事が、チョット難しい点はデメリットだけど