2015/08/31

オオクロナガオサムシのコウチュウダニ

大阪のオサムシにはコウチュウダニ Canestriniidae(コナダニ団 Astigmata)が全然見つからんと思っていたら、オオクロナガオサムシには結構付着していることに気がついた。
つや消しで地味めなオサムシは採集しないという偏向した姿勢が、コウチュウダニを観察する機会を減じていただけみたい。

淀川左岸(樟葉)のオオクロナガオサムシにはCanestrinia sp. が見られたけれど、日本産野生生物目録 無脊椎動物編1(1993)ではCanestriniaというとマイマイカブリナカセの属名だ。

Canestrinia sp. 雌



オオクロナガオサムシにいるマイマイカブリナカセ・・・、もーいったい何の話をしているんだか。

2015/08/30

みつもん

虫退治で訪問した客先の駐車場で、剪定後の小枝が小山のように積まれているのを見つけた。
アベリア、ユキヤナギなどが多いようだった。すっかり枯れた葉の下にファイルケース(半透明な硬い板状の製品)をさしこんで、小枝を叩いてみると1個体だけ小さい甲虫が落ちてきた。

(神戸市北区で採集)

ミツモンセマルヒラタムシの仲間 Psammoecus  だった。あとで実体顕微鏡で観察して、自信満々にミツモンセマルヒラタムシP.  trimaculatus と同定した。もう20個体くらいバラバラにして標本にしてるから、同定なんか簡単やね、なんて思っていた。
交尾器を取り出したら側片と中央片がバラけてしまったが、側片の形が変だ。


(雄交尾器の一部)

瓜二つの別種が三重県とかにもいるって、たしか文献に書いてあった。
文献を探しだして、交尾器の絵と標本写真を見比べてみた。
どうやら trimaculatus ではなく、ハチジョウミツモンセマルヒラタムシ P. labyrinthicus というファンタジーな種小名が付された種のほうだと思う。

生まれつき容姿に恵まれない人が寂しく暮らしていたラビリントスという建造物の話は、美女をたぶらかして魔法アイテムをゲットした勇者により侵入されてしまい、蛮虐のかぎりをつくされるという嘆かわしいオチで終わっている。なにか微妙な教訓を含んでいるような気もする神話だ。
ラビリントスの語源は「斧」を意味する言葉らしいのだけれど、交尾器の側片はなんだか斧みたいにみえなくもない。

近畿地方にはミツモン、ニセミツモン、ハチジョウミツモンの3種がいるわけだが、いったい何匹くらい調べたら肉眼で確実に区別できるようになれるだろう。これからは、採集できた枯れ葉のカビなんかにも少しは注意したい。

2015/08/29

虫採りロード

国道脇に、きちんと整備された無料休憩所があるのはホントにありがたい。
食事したり、仮眠したり、清掃されているトイレを使用させて頂いたりと、仕事で長距離移動する労働者には貴重な安息の場所だ。
しかも、除草作業で生じた枯草積みを、敷地のハズレの目立たないところに少しだけ残しておいてくれるとは!
豊岡市には、私の行動をみてて情けをかけてくれる道路清掃作業者でもいるのかと思うくらいだ。

採集させていただきますとも、枯れ草の微小甲虫とかダニとか。
普通種とはいえ、菌食性の甲虫はサッと増えてサッと消えるようなことが多いので、いつでもどこでも採集できるとは限らない。

マルガタキスイ Curelius japonicus は、学名からは日本限定分布ぽい雰囲気がただようが、欧州諸国や北米まで侵入種として勢力を拡大している種。日本に分布していることさえ、元々いたのかどうかアヤシイもんである。
欧州在来の同属種は稀少らしいが、そいつらが仕返しに日本までやってきたとしても、私は文句をいうつもりはない。
写真がいい加減でも、最近はなんも思わんようになってきた。

マルガタキスイ雄の交尾器




2015/08/27

好漁場

害虫対策として、建物の出入口に近いところにライトトラップを吊すと、やたらとクモ類が周辺に巣をつくりたがる。効率よく獲物を捕まえられるのだろう。丸々とした元気なクモばかりである。

クモの巣は見た目がよろしくないのだが、建物内に迷い込む虫を水際で防止することに、クモが一役買ってくれているという見方もできよう。卵嚢さえなければ本当にいいヤツラである。




目立たない感じで営巣してくれていれば、そしらぬ顔で見逃すこともやぶさかではないが、コイツに関しては差し渡し20cmを超える目立つ巣を、われわれの商売道具の上に作っているので、排除せざるとえなかった。



巣の主はクサグモ Agelena silvatica の雌だった。


2015/08/24

建物トラップ

食品工場に昆虫が迷い込むということは、人間様側の立場からは頭の痛い問題ではあるけれど、虫にしてみれば食品工場の建物ほど迷惑で恐ろしい物体もないだろう。
食品工場というヤツはとにかくデカイ。虫からすれば、ぶつからないように飛ぼうというのは無理な話である。
しかも猛烈な勢いで激しく息をしている(換気ともいう)ので、ありとあらゆる小さな虫が吸い込まれてしまう。
いったん建物の中に入り込んでしまうと、ふたたびお天道様を拝めることは稀で、相当な幸運がないと助からない。

写真の哀れなノコギリクワガタは、食品工場の壁の中に入り込んでしまい、ガルバリウム鋼板の下端隙間から外へ出ようとして半ばで力尽きた様子である。

無念そうな死骸。


死骸は引っ張り出して持ち帰った。
ホントにクワガタって大きくても小さくてもかっこよい。



一般の虫には地獄みたいな食品工場だが、貯穀害虫というヤツラからは居心地満点の楽園として狙われていたりする。

2015/08/19

ポリプダニ kawaii

オオゴミムシのポリプダニを属までは確認できた。
Eutarsopolipus sp. と考える。
スジアオゴミムシにくっついている Eutarsopolipus asiaticus ってヤツがいるらしく、その文献にある図と見比べてみた。よく似ているけれど、少し違うような気がする。
Eutarsopolipus sp. 雄

雄も雌も成虫なのに脚が3対。若虫っていう呼び方もないらしく、それにあたるものはlarval femaleなどという用語で扱われている。幼雌・・・って訳すと、なんか変。おさなメス・・・さらにアカン感じになってきた・・・。






幼雌はカワイイ。けど、クマムシに勝てるほどかというとビミョー。
ぬいぐるみ化されて、生物オタクたちに愛されるようになるとは、あんまり思えない。

Eutarsopolipus sp. larval female 




2015/08/17

オオゴミムシのダニ





トゲダニ類とかヒナダニ類とかって実はあまり関心がないので、甲虫の体表で見つけても、無意識的に取り除いて捨てるだけのことが多い。ときどき、かすかな後ろめたさを感じることもある。
焼き魚を食べているときに、まだ食べられるところが残っているのに捨ててしまうってのに近い心情。
でも、世間的な価値観で考えれば、虫自体がゴミなので、まさにゴミ中のゴミといってさしつかえないだろう。

オオゴミムシ(Acleris氏による採集品、神戸市の裏山産)のダニをちょっと標本にしてみた。
さやばねの下に、すこし大きめの茶色い光沢のあるゴミと、小さい黄色っぽいゴミの2種いた。





少し大きめのダニはオサムシマルツヤトゲダニ Stylochirus fimetarius の第二若虫と考える。
以前 はIphidosoma属が使用されていたが、最近の研究でシノニムになり、日本産土壌動物 第二版(2015)では前述の新称和名が示された。






小さい方はポリプダニの一種 Podapolipidae Gen. sp.  このダニについては、知らないこととか知ったふりなことだけで、そのうちブログネタにしたいと思っている。

2015/08/13

ウスチャケシマキムシ

ウスチャケシマキムシ Cortinicara gibbosa (Herbst, 1793)

左が雄、右が雌。
ニコンCoolpix4500で撮影。



おそろしく暑い夏でも、市街地の道ばたなんかで採集できるヒメマキムシ科。
フェンスに絡みついたクズの枯葉をはたいてみたら、たくさん落ちてきた。普通種ぶりは見事なもので、とても多くの国から記録がある。
採集例が少ないヒメマキムシ科の珍種くんたちは、ちょっとくらい本種の生き様をマネしてほしいくらい。
ヒメマキムシ科には一度は採集してみたいけど、日本では多分ムリって種がかなりいる。
クロヒメマキムシ Lathridius minutus とか。



腹面


オリンパスTG-1を借りてコリメート撮影してみたもの。やたら黒っぽい体色になった。
Coolpix4500の色合いのほうが実際に近い気がする。


雄の交尾器。


2015/08/10

Windows10にしてみた。

●機械というのはボタンがあると押したくなるモノだが、パソコンのアイコンも同じで、つい押してしまう誘惑に打ち克つのは容易ではない。
過去、OSのバージョンが上がるたびに、何度もひどい目に遭ってきたにもかかわらず、進歩にたいする興味とかなんとかいいながら、ウィイドウズ10のアップデートをクリックしてしまった。

アップデート直後は、内蔵カードリーダーが動かなくってアセッたが、再起動するとナニモカモ調子よく動き出した。ほんとにドキドキしながらの更新作業であった。4時間ほどかかった。

息子のパソコンだからやってみたのだが、自分のパソコンではこんなこと恐ろしくてできん。





●Megachile不明種の幼虫についてたヒポプス。Vidia lineata Oudemans, 1917(キノウエコナダニ科)と考える。和名はないけど、珍しいモノではなさそう。ヨーロッパからアジアにかけて広く分布している。つるつるでつかみ所のなさを利点とするヒポプスのくせに、後体部背面に妙な縦筋状模様なんかがついていた。





第Ⅰ脚(右)に笹の葉のような大きな剛毛が3本ある。第Ⅱ脚(左)。
爪の長さと前ふ節(透明ぽい部分)が同じくらいの長さ。
前ふ節が長いのは別属になったりする。ヒポプスの分類はややこしい。








*参考文献 Fain A., 1972. Notes sur les hypopes des Saproglyphidae (Acarina : Sarcoptiformes). II. Redéfinition des genres. Acarologia 14: 225-249.

2015/08/07

tokyo




夕方といっていい時間帯から会議というのはよしとしても、場所が東京だというのは大阪の人間にキビシイ。
会議の場に3時間ほどいて、他のほとんどの方々はそのまま飲み会なのに、私は翌日仕事があるのでソッコウ帰阪しなければいけなかった。
プラタナスグンバイの繁栄ぶりをみながら、歩道からの照り返しがきつい外堀通りを八重洲北口に向かってのろのろと歩き、常盤橋の日陰になった小さな公園で一息ついた。ケブカアメイロアリは見かけなかった。
水路の暗い水面もながめてみたが、ムシがなんぞいるような気配はしない。
東大阪の汚い川にだって、同定できない半水生半翅目がいたりするので、ココも調べてみると面白いかも。




700系のぞみをホームのベンチで待っているあいだ、手にノミバエが親しげにまとわりついてきたので採集したった。あとで調べたらコシアキノミバエ Dohrniphora cornuta の雄だった。
ええムシをとった・・・・。





新幹線ホームのムシ限定ドイツ箱をつくったろかいっ!







中脚脛節基部の2本の目立つ剛毛

後脚腿節基部腹側に先端が丸い短剛毛(感覚棘)。
文献では5本以上とあるが4本の個体もいたりする。

短剛毛の拡大
こういう隠れたところにある毛はなんの役に?