2024/06/18

眼が5個ある節足動物


眼が5個あるダニを観察した。






チビテングダニ属 Cyta の一種。生きているときは眼がハッキリわかるけど、プレパラートにするとよく分からなくなってしまった。

前体部背面の側方に2対の眼というパターンのダニはそれほど珍しくないと思うけれど、チビテングダニはさらにその前方の中央に眼がもう1個ついている。

写真の個体は、室内塵から出てきたけれど、顎体部を含めた体長が約0.55mmくらいで、生殖吸盤も未熟な感じにみえるので若虫と思う。

テングダニ科にしては顎体部が比較的短めだし、ちょっとコナダニ類的な雰囲気ただよう太短い鋏角を持っている。以前にも、家の周りのコケにいる個体を観察したことがある。

同じような配置で眼が5つあるダニは、ニセササラダニ亜目のAmphialycus属にもいるらしいけれど、そんな属のダニなんて世界のどこにお住まいなのかすら知らない。

同じくらいの大きさの眼が5個ある動物なんて、世の中にどれほどいるのだろう?

昆虫であれば、単眼3個+複眼2個なんて種類は相当数いるが、それらは複眼の大きさに比べると単眼はかなり小さいので五つ目生物とは言いがたい。サソリ目とか、もっと別の節足動物にも5つ目がいそうだけれど、体の真ん中に1個+体の横に2対の眼なんて種類は思いつかない。

AIのCopilotさんに聞いてみた「眼が5個ある節足動物」・・・
・・・答えがオパビニアとかって・・・とっくに滅びてるやん・・・

2024/01/29

イエダニの若虫

 


プレパラートにしていたイエダニ Ornithonyssus bacoti の前若虫(protonymph)と思われる標本を少し観察してみた。室内から見つかった死骸が数個体封入されていて、それぞれ破損しているけれど体毛などは偶然にもよく残っていた。
イエダニの発育各期の形態に関しては、私はなんの知識を持たないが、この標本は成虫と共に採集されたことや、文献にある図(Evans & Till, 1966)とよく似ていることから前若虫と判断した。

イエダニの発育段階のうち、室内塵の観察程度でお目にかかれるのは、普通は前若虫と成虫だけだろう。イエダニの幼虫と後若虫については、どちらも摂食をせず、移動力にも乏しく刺激されると少し歩く程度だし、その期間も1~2日程度らしいので、そう簡単に室内塵などから見つかりそうにない。そんな幼虫と後若虫の外観は、標本を実際に見たことはないけれど、背板や胸板が見当たらなくて毛がまばらに生じた袋に脚が生えたみたいなもんらしい。

摂食といえば、よく分からないのがイエダニの若虫の鋏角で、ずいぶん細くてか弱いハサミにみえる。こんなのをどう動かしたら、皮膚を通って血液にたどり着けるのだろう。
左右の鋏角が交互に細かく動いて、先端をチョキチョキさせながら皮膚を貫いていく様子を想像してみるのだが、実際に吸血中の様子を観察する方法は思いつけない。

イエダニとは、なんともシンプルで覚えやすい名前だ。明治から大正にかけて活躍した生物学者の渡瀬庄三郎により与えられた和名(Yamada, 1931)だという。渡瀬庄三郎は、外来種導入研究とか、渡瀬線(個人的には地図のどこに線引きすればよいのか覚えられない)などで有名な方。

イエダニ自体も外来種(山田, 1936)らしくて、関東大震災後に海外から来た衣料品などを含む多量の支援物資に紛れてきた可能性があるなんて、ちょっと失礼な気もする考察もされているけれど、とにかく震災前には知られていなかったそうだ。このあたりの外来種と、大震災や戦争との関連については深堀りすると面白そう。


昭和初期には「誰知らぬ者も無い位になって」いたイエダニも、時の流れとともに一般の認知度はすこぶる低下してきたようにみえ、もはや令和の今となってはそこらの若者に聞いたところでたぶん誰も知らないだろう。これも、ひとえに昔の偉い人々がネズミ類の防除の方針を立てたり、衛生環境を守るための法整備をしてくれたおかげか。

とはいえ、現在でもイエダニはネズミ類と共に街の一隅でひっそりと生き延びているのは確かだ。


【参考文献】

・Evans, G. O. & Till, W. M. (1966) Studies on the British Dermanyssidae (Acari: Mesostigmata). Part II. Classification. Bulletin of the British Museum (Natural History) Zoology, 14: 107 - 370.
https://archive.org/details/bulletinofbritis14farn
(325ページに前若虫の図あり)

・Observations on a house-infesting mite (Liponyssus nagayoi, n. sp.) which attacks human beings, rats, and other domestic mammals, with brief notes of experiments regarding the possibility of the plaque-transmission by means of the mite
Shin-ichiro YAMADA
動物学雑誌 43 (508-510), 237-249, 1931-03-15
DOI https://doi.org/10.34435/zm002109

・イへダニの習性
山田 信一郎
Acta Arachnologica
1936 年 1 巻 2 号 p. 47-50_2
発行日: 1936/07/22
DOI https://doi.org/10.2476/asjaa.1.47

2023/10/19

トフシアリの結婚飛行

 

トフシアリのオスアリ

トフシアリの雄がたくさん飛んでいるところを和泉市の中央公園で見た。芝生の広場の端でいくつかの集団を形成していて、少数だが雌も低いところを飛んでいた。見たのは10月の16日と17日、そして今日の19日のいずれも午後3時頃。18日だけは公園に到着したのが午後4時と遅かったせいかまったく見かけなかった。どの日も結構風があったが負けずに飛んでいた。

トフシアリの女王

女王の腹柄


最初は、ユスリカの群飛と思っていたが、何気なく手で捕まえてみると、見慣れない雄アリだった。帰宅して調べて、なんとかトフシアリにたどり着いた。ヒアリと同じ属。
働きアリの触角が10節なのでトフシアリというらしいが、女王は11節だし、オスアリは12節だ。アリを同定する検索表は、働きアリが中心なので、生殖虫についてはまあだいたいが私には分からない。

女王の触角(11節)

オスアリの触角(12節)


トフシアリなんてほとんど見る機会がなくて、近所では中学校の校庭の土を篩って、働きアリを数個体採集したことがあるが、何年も暇さえあれば来ているこの公園では確認したことがなかった。
ものすごい数のトフシアリの羽アリたちを見ていると、自分の日常の観察力が大変疑わしいものであることは重々知ってはいたが、さらにそれが極小サイズの節穴であることが目出度く認定されたような気がしてきた。
観察力がイモでも、ネットを数振ればたまには珍しいものが採れてうれしいのが虫採りなので大丈夫だ。

2023/10/15

寝具のダニ類を粘着紙で調査

 


自分が使っている寝具にいるダニ類を調べてみた。

10月に入ってなんか少し痒い気もしていたし。
寝具のダニ類は、一般的に敷布団に多い。
私が使用している敷布団(シングルタイプ、カバー付き)は使用歴5年くらいで、敷きパッドをかぶせて使用している状態だ。布団カバーは月に一回ほど掃除機をかけていたが、3か月ほど洗濯していなかった。敷きパッドは2週間に1回ほど洗濯していたので、その下はキレイとなんとなく思っていたような気がする。
敷きパッドを取り除いて、敷布団カバー上面に粘着ローラー(汎用円筒型粘着清掃器具)を押し付けて1分間ほど転がした。
次に塵が付いた部分の粘着紙を外して、実体顕微鏡で粘着面を観察してみた。
チリダニ科46個体、ツメダニ科3個体、トゲダニ科1個体が確認できた。

掃除機を使う頻度を増やして、吸い込みノズルをもう少しゆっくり動かして使うほうがよさそうだ

粘着紙に付いた状態のチリダニ科(乾燥した死骸)

粘着紙に付いた状態のチリダニ科(新鮮な死骸)


粘着紙に付いた状態のミナミツメダニ

粘着紙から外してプレパラートにしたミナミツメダニ

ミナミツメダニの顎体部

粘着紙に付いた状態のチトゲダニの一種

粘着紙から外したチトゲダニの一種。足がだいぶ無くなった・・・。

チトゲダニの一種の胴部後方

室内塵性のダニ類は、こういった寝具や、ソファー、床材といったところの人間と接触する表面でよく見られ、粘着紙などでも簡単にサンプリングできる。実体顕微鏡で個体数を調べるのなら、あらかじめ粘着紙に極細油性ペンで1cm間隔くらいで線を引いておくと数えやすい。

ツメダニ類は、一般的に他のダニ類や微小昆虫を食べて生活していて、生息密度が高くなると、ヒトも刺される機会が増えて問題化すると考えられている。とはいえ、どういう生息状況なら「皮膚のかゆみの原因」認定可能かということはよく分からない。
ツメダニ類に咬まれて痒いのは、Ⅳ型アレルギーと考えられる。なんであれ、アレルギーというものは個人差が大きく、原因物質の量と症状の程度に単純な関係を求めることは難しい。
個人的にはサンプリング方法がなんであれ、1平方メートル当たりの検出数が重要な目安になると考える。1個体くらいなら、多くの一般家庭でみられる問題になりにくい状況だと思うけれど、2~3個体なら微妙な感じで、新鮮な個体が4~5個体以上なら皮疹の原因になる可能性が濃いのではなんて思っている。この判断は経験的な感想で、科学的な根拠はない。
意外なことに、けっこうな生息密度でミナミツメダニが検出されていても、ご家族のだれもカユイなんていわないお宅もある。

自分の敷布団(約1.9平方メートル)の場合は、1平方メートルあたり約1.5個体だから、痒いことに関係しているのかどうかよく分からない感じだが、あまり増殖されても嫌なので、敷布団を念入りに掃除機掛けして、布団カバーも洗濯した。その後に同じように粘着紙でサンプリングして観察したら、ツメダニ類は確認できなくなった。

私の敷布団にいたツメダニ科は、すべてミナミツメダニ Chelacaropsis moorei Baker, 1949 だった。
ミナミツメダニは、記載時はフロリダのアメリカモモンガから見つかっていて、その後は熱帯地域を中心に貯蔵ニンニク、室内塵、鳥の巣などで記録されている。特にニンニクについての報文では、チューリップサビダニと一緒に見つかったことからミナミツメダニが益虫になる可能性が示唆されている。Chelacaropsis属は日本では1種しか知られていないけど、BioLib.czのサイトによれば世界に7種いて、表土やら鳥などからそれぞれ記録されている。

トゲダニ科については、チトゲダニの一種 Androlaelaps sp. だった。日本産ダニ類図鑑で調べるとホソゲチトゲダニ Androlaelaps casalis に似ているけれど、近似種がいくつかいて、私には種まで落とせそうにない。
ホソゲチトゲダニは、貯穀害虫類の天敵だったり、ワクモのような吸血性トゲダニ類も捕食するので益虫の面もあるらしい。
ホソゲチトゲダニは、ヒトの皮膚炎に関与しているとする海外の報文もあるけれど、ホントにヒトを加害しているのかという点は検証されておらず、強く警戒すべきダニ類とは思われない。

粘着紙によるダニ調査(市販されているキットもあるが)は、なんといっても清掃用粘着ローラー(元祖製品名はコロコロ?)くらいは大抵のご家庭に装備してあり、とても手軽に始めることができる。実体顕微鏡さえあれば誰でも観察までできるし、七面倒な「掃除機の室内塵からのダニ分離」をしなくて済むところも喜ばしい。粘着紙からダニを外してプレパラートにする事が、チョット難しい点はデメリットだけど

2023/07/11

昆虫に寄生するヤモリダニ科

室内から見つかるダニ類の中に、以前から気になっている前気門類の不明種がいる。

ここのブログで以前に取り上げたこともあったけれど、思い出せる範囲では過去に遭遇したのは計4回。

最初に見かけたのは東京郊外にある現場作業者御用達の民宿だった。もう40年ほど昔の話だが、害虫駆除業者数名で大阪から東京のとある学会発表を聞きに行った時のことだ。民宿の和室で畳を起こして叩いてみたら、微小な赤いダニが何匹か採れた。大阪に持ち帰り調べてみると、テングダニを丸っこくデフォルメしたみたいな形態で、他の人にも見てもらったが誰も分からなかった。その当時のダニ検査に関わっていた会社の皆さん(私を含め)は、基礎的なダニ分類の勉強を始めたばかりだったし、衛生問題とは無関係そうな前気門類という結論を出すのが精いっぱいだった。

その次は、歩行性昆虫調査用の粘着トラップで捕獲された状態で見つかっていて、食品工場(兵庫県、2018)で1例、小分け業倉庫(兵庫県、2020)で1例。どちらも、ヒラタチャタテの腹面で後脚基節の後方に付着していた状態で確認された。食品工場で発見された個体は、驚いたことに胴体部が膨張して卵を産んでいた。


 
食品工場で得られたヤモリダニの一種:
ヒラタチャタテに付着した状態とダニの透過光観察


最後の4例目は、宿泊施設(大阪、2023)の室内塵から単体で分離された死骸で、この個体をホイヤー氏液に封入したのが、現在のところ手元にある唯一の標本。

標本をゆっくり観察してみると、興味深い特徴が見えてきた。

a. 鋏角の基部に側方にやや突き出ているような構造の周気管がある。
b. 爪に毛が生えている。
c. 数節に分かれた微小な触肢があるが、発達した鋏角が被さっていて背面から見えにくい。

宿泊施設で得られたヤモリダニの一種


これらの特徴から、ずっと気にかかっていた不明種はヤモリダニ科 Pterygosomatidaeと判断した。

属はPimeliaphilus と思う。Pimeliaphilusはいくつかの種が記載されているけれど、それらの種の宿主は、甲虫類、ゴキブリ類、サシガメ類、サシチョウバエ類、サソリ類、ヤモリ類などという奇妙なラインナップで報告されている。

おそらく、Pimeliaphilusは動物の巣に適応していて、動物に寄生、その巣の同居者である昆虫に寄生、という二つの道(どちらが先なのかはともかく)に進化しているのではないかと、このダニの研究者たちは考えているみたい。

昆虫に寄生するヤモリダニ科は世界中に記録があるけれど、日本での昆虫寄生例の記録は見つけられなかった。

別の属になるけれど、トカゲ類専門に寄生するヤモリダニ科には、マダニの体表に産卵するという変な種も報告されている。とにかくヤモリダニ科は、謎めいた生態や、属の扱いや高次分類を含めて分類学的な議論も多く、素敵に難解な科である。

今回紹介したPimeliaphilus sp. と思われる種は、ヒラタチャタテに寄生するようなのだけど、そんな普通にいる室内種に、ダニが寄生してたという観察例が他に見当たらないのも不思議。本命の宿主は、別の何かなのだろうか?とにかく観察例が少ないので、今後知見が増えるのを待つしかないだろう。

そういえば、『ダニ類 ーその分類• 生態• 防除ー』(東京大学出版会,1965年)などでも紹介されているPimeliaphilus podapolipophagusは、チャバネゴキブリなどのゴキブリ類に致命的なダメージを与える天敵で、海外のダニ専門書では普通種ぽく紹介(ヒトも刺すらしい)されてたりするけれど、日本での記録は見つけられなかった。そんな信じがたい寄生?をするダニにも出会える日を夢見ている。

ともあれ、長年の疑問が少し解けてきて、ちょっと嬉しい。チャタテムシの寄生ダニなんかに関心がある人なんて、地球全体でも恐ろしく少人数と思うけれど、このブログを読んで微妙に興味が湧いた方には、ぜひ足元の床なんかを観察してみることをおススメしたい。

2023/06/25

そうだエアコンを掃除しよう

 使うのを我慢していた自宅のエアコンを、本日試運転してみた。動かそうとする直前、過去の現場でのエアコントラブルを急にいろいろ思い出してしまった。

半年くらい停止していたエアコンの内部で何が起きていたかを、人々が驚愕とともに知ってしまう現象の数々。

工場内で「暑くなってきたから、エアコン入れましょう」と笑顔で責任者がスイッチを入れると、涼しい風が働く人々を撫で始め、みんなも笑顔になるものだ。でも、そんなときに誰かが、天井にあるエアコンの吹き出し口の真下あたりで変なコトに気が付いたりする。
よく清掃しているピカピカの床に、灰~黒色っぽい粉みたいなものたくさん落ちていて、顔を近づけると何か小さなものが動いているというアレ。

コナチャタテ科とかヒメチャタテ科とかウスイロチャタテ科とかetc、、、。
目のいい方なら、ケナガコナダニなどの菌食性が強いダニ類も発見できることがあるかもしれない。


自宅リビングでも、同じようなコトがあったりするとチョット嫌かも。

いちおう確認してみようと思いたち、本体内部から飛び出したものを集められるように、エアコンの吹き出し口にコロコロの粘着紙片を張り付けてみた。


スイッチオンして数十秒経過後、粘着紙片を剥がしてみると黒いものが少しくっ付いていた。

拡大すると、ヒラタチャタテと思われる種だった。ダニ類は残念ながら確認できなかった。
ヒラタチャタテの消化管に見えている黒いものは、たぶん菌類だろう。菌食性の昆虫の消化管内容物って、大抵真っ黒な気がする。

エアコン吹き出し口の隙間から奥を覗いてみると、シロッコファンにカビ様物質ががっつり付着しているのが見えた。

早速、YouTubeでDIYでできるエアコン清掃方法を検索した。

2023/06/18

タマネギとカブトエビ

 

何日も前から、田んぼに浮いたタマネギを散歩中に見かけていた。
田植えが終わった頃、そのタマネギたちはいつのまにかあちらこちらの水面に何十個も漂っていた。
ゴミを片付けてないだけのように見えるが、あぜ道はキレイだしナニか違和感がある。
肥料の一種なんだろうか?水田ってそんなことしてたっけ?
まさか、タマネギの香りがするコメが作れるってことはないだろう。

カブトエビも泥で濁った水中を見え隠れするようになり、日に日に数が増えてきた。
浮いたタマネギの周りで、カブトエビが群れているのがなんだか気になった。
カブトエビは雑食性らしいけれど、タマネギなんかが大好きだったのか、、、。
道端からのぞき込んでいる限りでは、カブトエビがタマネギそのものにかじりついているのかどうかは分からない。
あるいは、タマネギに集まっている微小生物などを食べている可能性だってありそう。
カブトエビはみんなとても元気で、これなら雑草やら藻類やらがあまり増えずイネが上手く育つに違いない。

もしかしたら、これらはみんな田んぼの持ち主の計画なんだろうか。