2015/05/04

マダニの呼び声

某所の河原でマダニを衣服から取り除きながら、そのうちの数個体はフィルムケースに収めて持ち帰った。
どこでもかしこでもマダニの多さには、ウンザリさせられる。シカの増殖と行動範囲の拡大による影響って話だが、実際にシカの食み跡はそこら中で観察することができる。

マダニを見かけるまですっかり忘れていたけれど、SFTSウィルスって近畿圏でも結構検出されていたと思う。


採集品を同定してみるとフタトゲチマダニ Haemaphysalis longicornis の若虫だった。
マダニ類は普通種の若虫と成虫であれば、文献をたよりに同定できる。
観察のポイントは脚基節の内棘や,顎体部背面の基部後縁にある角状体、触肢の形状など。







写真の個体は水+オキシフル+中性洗剤の混合液に18時間漬けていて生きていた。一緒に入れていた微小甲虫たちは体がふくれて死亡していたのに、フタトゲチマダニ若虫だけが、外観の変化もなく生きていた。
オキシフルに入れられて、泡も出ないで生きている生物って何なんだろう。未吸血個体だけの特徴なんだろうか?体表構造がどうなっているのか知りたい。

ところでなんだってまた私も、全く価値がないような昆虫を採集しに、マダニだらけの野や山へ出かけているのだろう?
ウィルスなどの寄生体がホストの行動を制御していることがあるらしいので、知らないうち脳を蝕むものの囁きに身を任せて、マダニ類に献血しにさまよい歩いているだけということは否定しきれない。

「山がワシを呼んでいる」とかって、家族にウイルス陰謀説を語り聞かせていると、「電波やね。いつもの電波なんやね。」という温かい反応であった。


参考文献: 藤田博己, 高田伸弘:日本産マダニの種類と幼若期の検索. ダニと新興再興感染症(SADI 組織委員会編), 全国農村教育協会, 東京p53-68, 2007.

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