2015/03/01

プレデター見習い

古い重要な昆虫の記載論文というものには、得てして図が少ない。
博物館の標本庫などにアクセスして、簡単に現物を閲覧できるような研究者向けの書式なのかもしれないが、一般人が調べごとで参考にするのは容易ではない。
交尾器や特徴的な部位だけが描かれているだけだと、ええんやね勝手に変な全体像を想像しても!なんて気にさえなってくる。

仮説として、こうした論文を書いているのは映画「プレデター」にでてくる異星の戦士みたいなヒトであったということも考えられる。
異星人がヒトから頭骨と脊椎を手早く抜き取って、高い所で雄叫びを上げてるシーンがあったが、あんな感じでムシから交尾器だけを取り出して、木のてっぺんなどで稲光を背景に大喜びで振り回している研究者がいたに違いない。
そんな研究者が、交尾器だけを標本箱に並べていたとしたら、図が交尾器だけという論文の説明が簡単につく。
生物は遺伝子の乗り物にすぎないという考え方もあるようなので、遺伝子のやりとりを直接担当する交尾器より大事な部分は他にないといえよう。
確かにクワガタムシやらカミキリムシなどの、完品だの不完品だのと四の五のいってるドイツ箱なんぞは捨て、交尾器だけを集める合理性には首肯できる部分もある。・・・私はイヤだけれど。

自分で採集したムシの交尾器取り出しには、いつもすごく苦労する。プレデターの解体作業のごとく簡単に素早くできるようになりたいものだが、あんな高みにたどり着けるはずはないだろう。それでも練習あるのみだ。
先日はミヤモトマルグンバイの交尾器を取り出してみた。オスの腹端にゲニタルカプセルという丸っこい部分があり、そのなかに生殖器が収まっている。ゲニタルカプセルは、第9腹節と第10腹節が変形したものらしい。把握器が大顎のように見えてアリの頭みたいな形状だ。
ゲニタルカプセルを日本語でいうなら、日本原色カメムシ図鑑第3巻(2012)では生殖節、昆虫学事典(1962)では交尾器のうというらしい。





昆虫の交尾器は、それぞれに複雑な造形が印象的だが、形と役割が細部まで解説されていることは少ない。
その筋の専門家が一般向けに、広範囲な分類群を素材にして、写真やCGを多用した交尾器の本を作ってくれないだろうか?いつの日にかは、文一総合出版のハンドブックシリーズなどに加わることを期待しよう。
扇情的なタイトルと萌キャラを表紙にすれば、絶対売れると思う。

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