2016/07/06

コクワガタ鞘翅下のクワガタナカセの一種

Acleris氏の散歩の拾いものをいただいた。兵庫県神戸市産のコクワガタMacrodorcas recta ♀1個体。
ご年配な雰囲気の個体で、後脚ふ節が片側欠けていた。道端を歩いていたらしい。

実体顕微鏡の下で観察してみたが、体表にダニは付着していなかった。クワガタムシの体表生活型クワガタナカセ類は、なぜかメスにはほとんどみられないようだ。
体表生活型クワガタナカセ類はどうやって増えていけるのだろう?
宿主オス同士が闘っているときにだけ、ほかの宿主に分散しているのだろうか?

先日から、大阪府や奈良県のコクワガタ♀の古い標本を5個体調べてみてはいるが、体表のみならず、さやばねの下を調べても何も見つからなかった。

今回のコクワガタは、かなり残酷だが、生きたままの状態で、翅の下を観察してみた。
驚いたことに翅の下には、金剛山(大阪府側)のミヤマクワガタ♀でみられたタイプのクワガタナカセの一種が付着していた。背面と腹面に長大な剣のような剛毛を持つ種類で、体表生活型の Haitlingeria sp. とは全く形態が異なる。脚が4対とも前方を向く体形からして退却が得意そうな感じだったが、素早く後ずさりする行動を観察できた。


複数の雌雄を観察できたので、今度は文献と照合してみた。Haitlinger(1991)がアムール地方のアカアシクワガタHemisodorcus rubrofemoratus から記録したUriophelaと同属と考えた。
gda Iが長大で、胴部背面に2対(d1とd2)、腹面に3対(cxIII, cxIV, ga)の太い剛毛があるという独特な特徴から判断した。
神戸市産 Uriophela sp. ♂




Uriophela sp. ♂の胴部腹面剛毛ga



Uriophela sp. ♀


コクワガタとミヤマクワガタにそれぞれいたUriophela sp. だが、ミヤマクワガタにいた方が若干脚が太くて剛毛が生じる間隔が狭まっている他は同じ形態のように見える。
Uriophela sp. が付着していたコクワガタの背板は、黒く汚損していて少し変形している部分もみられた。ケモノツメダニのように、宿主の皮膚の免疫システムを刺激して、浸潤液を吸汁するという摂食方法なのだと推測する。とすると、コクワガタはとてもカユがっているかも知れない。



*参考文献
Haitlinger R., 1991: Rugoniphela n. gen., Noemiphela n. gen. and Uriophela n. gen. three new genera of canestriniid mites (Acari, Astigmata) from Asia. Redia. 74(2): 533-542.

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