2015/04/05

ニセミツモンセマルヒラタムシ

神戸市北区の食品工場で、壁面でミツモンセマルヒラタムシらしき成虫が複数個体はっていたことがあったのを思いだし、標本を確認してみたらミツモンセマルヒラタムシ Psammoecus trimaculatus だった。室内で世代交代できたのかどうかが未解決のまま、再発することもなく終わったケースだった。

食品工場の中にいたミツモンセマルヒラタムシの雄交尾器




調べ出すと、他の標本も気になってきたので次々に交尾器を観察してみた。
仕事の合間に、交尾器をみたりすると悲惨だ。
相談事に対応している間に、カバーガラスをかけていないプレパラートのうえにメモ用紙を置いてしまったり、電話をとろうとした瞬間に交尾器がどこかに飛んでいったりするので、交尾器がない標本なんてゆー誰もいらないものを量産してしまう。

ニセミツモンセマルヒラタムシ Psammoecus triguttatus は、兵庫県南部の郊外の雑木林数箇所で採集されていた。雄の交尾器は全体が比較的大きいが、側片の基部は小さい。



ニセミツモンセマルヒラタムシの雄




ニセミツモンセマルヒラタムシの雄交尾器


ミツモンとニセミツモンは、並べてみると確かにどことなく違う種類のような気がしてくるが、かといってドコが違うのかというのも上手くいいあらわせない。・・・まっ結局、1個体ずつ見分けられるようになれるとはまったく思えないムシである。

最新の論文では、検索表でさやばねの点刻列が比較的広いものがニセミツモンと書いてあるので、ためつすがめつしてみたのだが、どちらの種も同じように見えてよく分らなかった。

落射光でみた場合・・・気持ち程度ニセミツモンのほうが点刻列が太いような・・・。


透過光でみた場合・・・・・。


標本にあてる照明の加減によっては、なんとなくニセミツモンの点刻のまわりに大きなくぼみが見えるような気もした。透過光なんかだと逆にミツモンのほうの点刻がでっかくみえることすらある。
私が多分、なにか観察方法を間違えているのだろう。


門外漢にとって、昆虫分類学の専門的なテキストは、しばしば、「なんとかの山の頂に月が昇る時、かんとかの岩に止まった虫の背に光輪が指し示めす」みたいな冒険小説などにありがちな謎のごときものに等しい。
検索表を読み解こうとして、あっちこっちとぐるぐるとさまよい、やがて砂塵に半ば埋もれたされこうべになることが多い。
そういえば、ハチジョウミツモンセマルヒラタムシ Psammoecus labyrinthicus の種小名には、迷宮という意味の言葉が使用されている。このグループを調べるには、危険がイッパイということだろう。でもひるまずに進むしかない。 



石垣島の名蔵でライトトラップしたときの古い標本もでてきた。
海岸の砂地に飛来してきた個体はミツモンの雄だった。
海岸性のムシと家屋で見つかるムシとには、どこか秘めやかな関係があると思う。

石垣島の海岸のミツモンセマルヒラタムシ雄

上の個体の交尾器



標本を眺めながら、石垣島の暖かな夜の海岸に、ゆるりゆるりとよせる波のことを想った。

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