2015/04/26

オレンジオソイダニの一種

海蝕崖の途中に溜まっていた土を入れていたコンテナは、珍奇なものも普通なものも得られないまま時は過ぎ、観察者の溜息だけが箱の中に残っていくので、中身を捨てて不毛な執着心を断ち切ることにした。
コンテナの底に溜まっていたゴミを検鏡してみると、ササラダニ類に混じって、オレンジ色のダニの干からびた死骸が出てきた。
実体顕微鏡で見るだけだと、背面も腹面も頑丈そうな肥厚板で覆われていて、ナニ科なのかまるで分らなかった。

オレンジ色のダニをプレパラートにして、日本産土壌動物(1999)などで調べてみた。









触肢は5節、顎体部腹面の毛は4対で、最前方の1対がカイゼルひげのように曲がっている、鋏角毛を欠く、第四脚脛節に長い感覚毛がないなどの特徴から、オレンジオソイダニの一種 Orangescirula sp. と判断した。日本産土壌動物には、日本での生息は不明とある。


学名にオレンジなんて単語が入っているけれど、体色にちなんでいるのだろうか?脚の先端は太くて小さな突起がある。胴背部前縁が顎体部基部にかぶさっていたり、背面後端がちょんと上向きに反っているところなど、見慣れたオソイダニ科とはかけ離れた雰囲気がある。体長も0.3mmを切っていて、オソイダニ科としては小さいと思う。


*参考文献

芝 実. 1999. ケダニ亜目 Prostigmata. 所収:青木淳一(編),日本産土壌動物-分類のための図解検索.東海大学出版会,pp. 211-311

Skvarla, M.J.; Fisher, J.R.; Dowling, A.P.G. 2014: A review of Cunaxidae (Acariformes, Trombidiformes): Histories and diagnoses of subfamilies and genera, keys to world species, and some new locality records. ZooKeys, 418: 1-103














** スゴクちーさいといえば思い出したけれど、youtubeで「Hidden miracles of the natural world」という昨年あたりに話題になっていた動画がある。シロアリの脚にくっついている小さいダニの電顕写真は、見た人の多くが驚いたことだろう。
でも、あれってチョット疑わしい。マジな映像にコラージュ画像を挟んでいるようにみえる。
作者は映像作家さんらしいし、演出の一環かもしれないので、どうでもいいことかもしれない。
くだんの小さなダニは、ワクモ亜団 Dermanyssiaeの幼虫にも見えるが、サイズが小さすぎる。私が知らない種なだけってコトも十分あるけれど、そうだとしても体表寄生者ぽくない形態が気になりすぎる。シロアリの脚などに付着するヤツは、コナダニ団やイトダニ科の若虫みたいに短足で陣笠ライクな体型でないと、宿主にくっついていられないだろう。





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