2016/06/05

クワガタナカセはドコに?

ひきつづき、クワガタナカセ Coleopterophagus berlesei について考えてみる。
結局、答えは出そうにないけれど。
生き物好きのあいだであれば、クワガタナカセって和名は、ダニにしては認知度が割と高めな気もするが、不思議なくらい分類の情報がない。
少なくとも、一般的な図鑑類などで詳しい解説を見つけたことはない。

検索サイトで調べてみても、日本産クワガタナカセ類の多様性は、現在研究されつつあるらしいということが、うっすら分かる程度。

佐々編『ダニ類―その分類・生態・防除 』(1965, 東京大学出版会)をひもとけば、「日本産のコウチュウダニとしては岸田(1925)が,クワガタムシLucanus sp. についていた1 種を Coleopterophagus berlesei Kishida, 1925 クワガタナカセと名づけた.」と記されている。該当種の図はなく、Grandiella escaudataの図が転載されてるだけ。

私がヒラタクワガタから、C. berlesei と思って歯ブラシで退治していた種は、標本を作っていないので何とも分からないが、どうやらお隣韓国で設けられた新属Haitlingeriaに該当するコウチュウダニかもしれない。

しかし、C. berlesei のタイプ標本は意外なことにミヤマクワガタの1種から採集されている。
ミヤマクワガタを長く飼育したことはあるけれど、ダニが気になったことはない。
でも、コウチュウダニは多くの種がさやばねの下にいるので、外観だけでは寄生の確認が難しい。真のC. berleseiはミヤマクワガタにいるのかもしれない。

ミヤマクワガタ Lucanus maculifemoratus ♀ 2個体の古い標本を取り出して、チョットさやばねの下を見てみることにした。金剛山産のほうの♀第3背板付近から、たった1個体だけコウチュウダニが見つかった。
そいつがまたとんでもない形態だった。

ミヤマクワガタ Lucanus maculifemoratus (大阪府金剛山産)
矢印位置にコウチュウダニ不明種がみられた。




ミヤマクワガタのコウチュウダニ不明種
Canestriniidae gen. sp. ♂
第4脚のつき方も変。


異様に太く長い牙のような外観の剛毛が、背面に2対、腹面に3対あった。
脚も異様な感じで先端に太短い三角錐型の剛毛が3本もある。なんちゅうHP高そうなヤツなんだろう。


ミヤマクワガタのコウチュウダニ不明種
Canestriniidae gen. sp. ♂
背面の鉤爪状剛毛(偏光の複屈折で光っている)


腹面の鉤爪状剛毛(偏光の複屈折で光っている)
前方の一対は片側が垂直で見えにくくて
もう一方は抜けて根元の穴だけになっている。



どんなコウチュウダニも、だいたい背面がつるつるではなく、強い鱗状、モザイク状、皺状、顆粒状との模様があるが、こいつには強い横皺模様があった。

なんかもう同定とかそんな話はヤメとくって感じの種だし、探しているものが何かなんてコトも頭から吹き飛ばされてしまった。

(以上のクワガタナカセの一種は、文献から Uriophela sp. と判断。2016年7月7追記。)

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