2015/02/01

クロゴキブリの粘着物質

先日みかけたクロゴキブリの若虫は、尾角のシズクのような粘着物質が撮影しやすい位置で静止していた。以前から簡単に撮影できると思っていたくせに、今まで上手く撮れたタメシがなかった。
今回のは少しマシと思う。



クロゴキブリの尾角は、腹面側に配置された振動などを検知するセンサー群が話題になったりするけれど、背面側でみられる粘着物質の優れた防御機能についてはどうなんだろう。あまり話題にされることがないように思う。

クロゴキブリについていえば、尾角の粘着物質は成虫ではみられず、若虫にしかみられないし、若虫でも生息密度が高いと観察が困難になるので、あんまり広くは知られていないのだろう。それよりなにより本体がキモ過ぎて、細部なんかみてられないって人が大多数に違いない。

この粘着物質の機能については、実験などで検証を加えつつ詳しく調べた研究が日本でおこなわれていて、いろいろなゴキブリ本に引用されている。それによると、クロゴキブリやヤマトゴキブリの若虫だと、複数のツノアカヤマアリの働きアリに囲まれた場合でも、シズクを周囲に飛ばして敵の動きを封じることができたそうだ。柔らかくて美味しそうな若虫が、あのキョーボーなヤツラを圧することができるなんて尋常じゃない。

私自身は、トルキスタンゴキブリを単独飼育しているときに、この防御物質の驚くべき力をみせつけられたことがある。
飼育している水槽の底に落ちているゴミを取り除こうとしてピンセットを入れると、突然ピンセットが閉じたままになり使えなくなったのだ。実体顕微鏡でピンセットの先端部をみると、ものすごく粘っこいモノがついていたのだけれど、少しの間はゴキブリとの関連も思いつかず、何が起きたのかサッパリ分らなかった。
ゴミの側にいたゴキブリをよく見てみると、尾角に何かシズクのようなものが付いていた。知らないうちにコレに触れたのかなと思ってシズクの一部を採取しようとすると、こちらの眼で追えない早さでゴキブリが身震いして、尾角に触れるか触れないかのうちに、またもやピンセットが使えなくなってしまったのだった。

この防御方法はホントに不思議だ。粘着物質はタンパク質だそうだが、硬化のプロセスとか保存性とかはどうなってるのだろう?とか、もっとゴキブリの狩りが得意そうなタイプのアリ(例えばトゲオオハリアリみたいな毛深いヤツラとか)が相手でも同じように勝てるのかなどと疑問は膨らむばかり。
粘着物質を反撃用兵器として利用している虫なんて、そんなに種類は多くないはず。ゴキブリの他には、テングシロアリ亜科くらいしか思いつかない。

工業的にクロゴキ粘着物質を大量生産できれば、暴れている人を鎮圧したり、相手の武器をジャムらせたりとかできるかも。すでになんかのマンガで出てたネタのような気もチョットする。


参考文献:Ichinose, T; Zennyoji, K (1980). "Defensive behavior of the cockroaches, Periplaneta fuliginosa Serville and P. japonica Karny (Orthoptera: Blattidae) in relation to their viscous secretion”. Applied Entomology and Zoology 15 (4): 400–408.

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