2014/12/06

探したくない場所を探す


ツメダニを探そうとするのなら、テッパンの動物や鳥の巣を調べれば、さほど苦労はしないだろう。
だが、それでは面白くない。あまり目を向けられていないような場所には、知られていない種がいてもよさそうなものだ。さて、自分はどんな所に目を向けていないのだろう。

海岸の崖の下に矮小なススキの株があった。根元の砂利混じりの土は、岸壁からにじむ水に浸かっていた。たまに波をかぶったりもしているのだろうって位置。こんな場所の土は、普通なら絶対に持ち帰らない。こんなの絶対に調べたくもない。
自分の常識的な判断に抵抗を試みた。メチャクチャ頑強な株の根を、満身の力をこめて土ごと半分ほどむしり取り、お持ち帰りしてみた。

持ち帰った土を調べてみたら、案の定ハズレだった。自らの愚問を追求して、しっかりと愚行と認定するほどつらいことはないと愚考する。
イヤな感じの土とは思ったが、双翅目の国とは思わなかった。
クロバネキノコバエ、チョウバエ、ガガンボ、ユスリカといった連中の幼虫だらけ。驚いたことにササラダニ類ですらほとんど出てこず、画期的なまでにダニ不毛ポイントだった。

根を水洗いしていると、ケシミズカメムシの一種が1個体だけ出てきた。水面の移動は下手だが、固体の表面では少しばかり跳ねることもできる。全身にピロードを装っているかのような質感、しかもラメ入り。体長2mm。
頭部のあたりでは、青く光るドットまでみられる。多分、普通種。








*参考文献

林 正美・宮本正一,2005.半翅目 Hemiptera.所収:川合禎次・谷田一三(編),日本産水生昆虫 科・属・種への検索,pp. 291–378.

澤田高平. 1995. 半翅目 Hemiptera. 所収:西村三郎(編),原色検索日本海岸動物図鑑[II], pp. 451-455.

POLHEMUS J. T. & POLHEMUS D. A., 1989. A new mesoveliid genus and two new species of Hebrus from intertidal habitats in Southeast Asian mangrove swamps. Bulletin of the Raffles Museum 37:73-82.


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