2015/12/14

ムリに答えてみる

粉砕された小さな甲虫でも、室内種であれば種数が限られるから、名前が分かることもある。


バラバラのオオメノコギリヒラタムシを複数個体調べるハメになって困ったが、頭部が残っていたのでなんとか同定できた。
雄の交尾器も確認してみたが、文献通りの形態だった。


ちょっと思ったのだが、頭がない雌のバラバラ死骸だったら、ノコギリヒラタムシとオオメノコギリヒラタムシをどうやって区別すればいいのだろう?
知っている範囲の貯穀害虫解説系の図書の中に、そんな疑問に答えてくれそうな本は思いあたらない。
コレは報告書を書く側にとっては楽ともいえる。「種までの同定に必要な形質を確認できない死骸であった」なんて、もったいぶった表現で仕事に区切りをつけることができる。
もちろん、ムリに答えを出す必要も全くない。
そして、標本の生殖器の比較などをやり出したりして、適当に答えを出そうものなら、それは独自研究っていう面が少なからず問題になってくる。
あのWikipediaとかも、たいそう嫌っている独自研究。

でも当ブログでやっていることといったら、独自研究なのかナニ研究なのか分からないし、研究と呼べるようなものですらないような気が強くするので、ノコギリとオオメの頭部以外の区別点に変にこだわってみる。

頭がないノコギリヒラタムシとオオメノコギリヒラタムシなんて、実体顕微鏡で眺めてみるくらいだと、まるで区別が付かない。
何の世界でも恐ろしい人はいるものなので、地上最強の同定者みたいな人がいれば、肉眼でふ節末端節をみただけでも「これはオオメじゃ」なんていってのけるかもしれない。けれどフツーはムリ、心が折れるだけ。

よくよく見つめ続けて比較していると、どことなく違っているような気もしてくる。胸部や脛節のカタチとか・・・。
これにしても、自身の観察眼がとらえた確かな点なのか、勘違いにすぎないのか悩むところ。

ノコギリとオオメの腹板基方の微小な表面構造が少し違うってことに気がついた。これは分類に使えるかも知れない(以下、両種とも雌だけ観察)。

ノコギリのほうは横長だけれど、


オオメの方は等径的。


感覚毛だろうか?ニョロニョロみたいなへんなカタチの短毛にも少し差がある。
左がノコギリで、右がオオメ。


両種の雌腹端内部に納まっている半腹板のあたりを比較してみた。
雌の半腹板末端にある尾毛の比較。上側がノコギリで、下側がオオメ。
ノコギリのほうがオオメより間延びした感じにみえるけれど、複数個体みていると区別がアヤシクなってくる。


ノコギリの雌には貯精嚢があるのだろうかと思って探してみたが、なんかぐるぐるしたモノがあるだけだった。これもspermathecaなんだろうか?
潰れたオオメの死骸からはキレイなカタチのものをみつけられなかったため、このあたりは比較できなかった。

ところでspermathecaをググると貯精嚢って普通にでてくるので、雄も雌も日本語だと貯精嚢か・・・なんて思っていたけど、個人的に聖典としてあがめている原色日本甲虫図鑑1巻を読み直して、雌にあるものは「受精嚢」と書くほうがよいことに気づいた。初心も初歩知識も忘れまくりである。

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