2017/09/03

いにしえの外来種

SNSにケシツブのようなアリ写真をのっけるだけなのに、タダで的確な答えがもらえるヒアリ警察の便利さは圧倒的だ。
従来から、ムシの相談にのってもらうことも可能なサイトってくらいなら、いろいろあった。でも、分類対象が限定的とはいえ、短時間でガチな答えが返ってくるなんてもんは、そうなかったように思う。

ちょっと不安になってくるところもあって、あまりに便利すぎると、ムシの分類と全く向き合わないようになる人が更に増える気もする。
ムシの同定なんかにコストかけるのは、やっぱバカバカしいよねなんて風潮が、一般の人だけでなく、害虫駆除会社にも強まりはしないかってあたりも。
類似の無料サービスが家屋害虫すべてに拡大されて、やがては、ムシの困り事をつぶやくだけで、「それは、○○です。○○で駆除できます」という答えがプッシュ通知される世の中になりそう。害虫駆除業者の未来なんてどうなるか分からないが、どう転んでも殺虫剤メーカーだけは安泰ぽい。

ヒアリといえば、先日大阪市の埋め立て地での調査に、私も(ムリムリ)参加させて頂いた。
炎天下の目視調査は大変だったが、埋め立て地で天下争いをしている在来種のアリ数種をたくさん見つけたり、ルリキオビジョウカイモドキと思われる種を観察(逃げられた)したりで、大戦果ヲ挙ゲリ。

作業で持ち帰れた甲虫は、なんということもない普通種のオオツヤホソゴミムシダマシ2個体だけだったが、一応は参考資料として標本にするため同僚に渡した。すると、2個体ともオオツヤホソゴミムシダマシかどうかアヤシイと再同定に差し戻しされてしまった。

2個体とも雄だが、交尾器には差異がみられた。
Aの個体は、前胸背板後角があまり外側に出ていないことがちょっと気に入らないが、オオツヤホソゴミムシダマシでよさそう。
Bの個体は、明らかに前脚脛節や頭部の形状が違っていた。日本産ゴミムシダマシ大図鑑(2016)の図版を絵合わせしてみたら、ナガサキツヤホソゴミムシダマシ Menephilus medius に似ている。われらがバイブル原色日本甲虫図鑑第3巻(1985) では図がなくて、ツヤホソゴミムシダマシの和名で本州、九州;中国に分布と掲載されてた種だ。新しい図鑑によると、長崎の標本しか確認されていないらしい。
Bは脛節の途中がくびれたように細い。

前胸背板後角

長崎というとトゲムネミヤマカミキリみたいに、史前帰化種ではないかと考えられている甲虫がいる地だ。ナガサキツヤホソゴミムシダマシってヤツも、ひょっとしたら日本の港々でオオツヤホソゴミムシダマシと同所的に細々と暮らす、とても古い外来種なのかも知れないと思った。

0 件のコメント:

コメントを投稿