2016/10/28

ヒサゴクチカクシゾウムシ

●和歌山県新宮市に行って、仕事をしたのはもう5ヶ月ほど前になる。その折に、海に近い雑木林にちょっと寄り、小さな朽ち木をコンビニ袋に入れて持ち帰っていたけれど、このたびメデタク小さなゾウムシが現れた。

ヒサゴクチカクシゾウムシ Simulatacalles simulator は珍しい種でもなく、特に関心のある虫でもないけれど、ムキになって脚を左右対称になるように整えた。
はがせる両面テープの上に虫をくっつけてから、サランラップの微小な破片でふ節を押えた。
写真撮影後に気が付いたが、触角が傾いた状態で焦点合成処理しているので、実際より随分と短く見えてしまう点がイヤな感じ。

虫を外すときは、面相筆に含ませたエタノールを、虫と両面テープの間に流し込む。
外れやすくなったら、そっと虫を剥がして紙製台紙に移して、ラベルをつけたら標本作り終了。



2016/10/10

キボシカミキリの便乗ダニ

神戸市須磨区産のダニ付きキボシカミキリ Psacothea hilarisを観察した。 Acleris氏の採集品。
ダニは2種類いた。
キボシカミキリの中脚基節付近に付着していた体長約0.2mmの種は、Paracarophena sp.だった。
この属はタマゴシラミダニ科Acarophenacidaeに含まれ、カミキリムシ科やキクイムシ科から記録されている。
日本から、キボシカミキリの卵への寄生状況についての論文がある。
その論文中の種は形態的な記述がほとんどないけれど、今回観察した種とたぶん同じ。






顎体部がのっぺらぼーな雰囲気で、どうやってモノを食べているのかイメージできない。
透過偏光観察すると、硬い鋏角があれば明瞭な複屈折が観察されることが多いが、本種ではなにか小さなものがあるなということしか観察できなかった。

透過偏光観察。矢印位置に何かありそう。

腹部肥大したダニはみられないので、カミキリムシの体表から体液を吸っているわけではなさそう。
昆虫の卵殻にくっついたときは吸汁できるようなので、鋏角 がなにか変わった仕組みになっているのは間違いないだろう。



もうひとつの体長約0.4mmのトゲダニ目は、カミキリムシの体表の決まった場所にいなくて、頭部から腹端までまばらにいた。




菌糸の破片のようなものがみえていた。



マツノカザリダニAmeroseius pinicola Ishikawa, 1972 カザリダニの一種 Ameroseius sp. と同定した。(追記:たぶんこの記事を書いたときはマツダカザリダニと思っていて、和名が似ているマツノカザリダニの学名を誤記したようだ。たが、その後、調べなおしてみるとAmeroseius ulmi と考えられる。)体内に菌類の破片がみられたので、菌食性と思われる。本州、四国、隣国の中国から記録がある。

体表のでこぼこには胞子が入り込んでいて、菌の運搬に役立っているのかも。そういえば菌食性の甲虫にも、やたらと凹凸の激しいのがいる。

どちらのダニも雌ばかりで、さやばねの下にはみられず、便乗ダニと考えた。

2016/09/26

駆除対象外

食品工場にもよるけれど、外壁に止まっているだけならクモ類は普通放置。
飛翔性昆虫の駆除を地味に手伝ってくれているし。


オスグロハエトリの雌と思うが、この仲間も写真だけだとかなり同定は難しい。
雨の日の軒下で、ガガンボの一種を食事中。



2016/09/20

秋のニセケバエ

ひとくくりにコバエと呼称されるムシたちには、実はいろいろいるけれど、害虫駆除業者だって分類が面倒くさいので、コバエの習性がどうの、コバエの対処方法はこうだのと、ふつうに何食わぬ顔でコバエを連呼しているものだ。
たまにコバエってものを分類してみることもあるが、けっこう面白い。

ビルの屋上の水溜まりの周りを、数匹のニセケバエが歩き回っていたので1個体捕まえて調べてみた。
夏も終わり、涼しくなってきてから、目につくようになった種だ。やたらと小さい(体長0.7~1.4mm)。
Manual of Neartic Diptera, Vol. 1(1981)をつっかえつっかえ読み、翅脈のイラストと見比べたりして検索をたどってみた。
Rhegmoclemina sp. と判断した。全北区で見られる属らしい。

春に出てくる奴らみたいに、大群になる例はなさそう。

ちょっと水にふやけてデカくなった成虫♂

翅脈



頭部 左右の複眼がくっついている。

雄の交尾器

精子ポンプ

ヒラタクワガタの短足コウチュウダニ sp.2

なんやかんやで、ブログに写真を上げそこなってたコウチュウダニのメモ。
神戸市産ヒラタクワガタ♂の口器周辺から、コウチュウダニが2種出てきて驚いたが、和泉市産ヒラタクワガタでは3種もいた。
3種の内訳は、脚の長い種が1種と、脚が短い種が2種。和泉市で新たに見られた種は、脚が短い種で、雄の肛吸盤が発達していた。


Canestriniidae gen. sp.2 ♂


この種は、脚が極端に短いという違いを無視すれば、ヨーロッパオオクワガタに寄生するCanestrinia dorcicolaにかなり似ていると思う。

通常、寄生性ダニ類は、宿主と1対1の関係にあるとばかり思い込んでいただけに、3種も同時に寄生しているなんて信じがたいことだった。
このブログでは、一応別種にしているが、ひょっとしたら「型」みたいなもので同一種ってこともありうるのだろうか?

それとも寄生部位に、それぞれミクロな違いがあって、3種が生活していられるのだろうか?


2016/08/09

天馬のごときダニ

コウチュウダニのことを調べるため、Biodiversity Heritage Libraryのサイトでベルレーゼの古い本を閲覧していると、
当時のダニ学者が中二病だったのかと疑わざるをえないダニの図を見つけた。


ウモウダニの一種 Oustaletia pegasus (Trouessart, 1885)
サイチョウの一種の羽毛でみつかるなんてかいてあったが、”ボクが考えた最強のダニにデビルウィングも付けてみた”みたいなヤツが、実際にいるとは到底信じられん。



カラー図を描いている人もいる。

2016/08/02

クワガタムシの口腔内洗浄

アマミシカクワガタ Rhaetulus recticornis の1985年9月に採集した♂の標本を、口腔内洗浄してみた。
少し洗剤を加えた水にクワガタムシを1日漬けて置いた。
クワガタムシを取り出して、ホースの先端に細いノズルを接続したものを使い、水道水をジェット水流にしてクワガタムシの口腔内へ吹き付けた。



洗浄作業は、小さなバケツの中でおこない、水しぶきや付着物を逃さないように集めた。
バケツに溜まった洗い水を濾紙に通して濾紙に残った付着物からダニを集めた。


クワガタムシの口腔内のダニ(精密画)



濾紙を実体顕微鏡で眺めると、コウチュウダニの幼虫やヒゲダニ科のヒポプスのような、低倍率のルーペでは見えにくいダニが、とても多く回収されていることが分かる。

アマミシカクワガタ♂の口器周辺についていたコウチュウダニは、じっくり文献と見比べたいが・・・、なかなかままならない。
とりあえず、Canestriniidae gen. sp.としておくしかないけれど、 Sandrophela属あたりだろうと予想中。

Canestriniidae gen. sp



Canestriniidae gen. sp の幼虫
体内に若虫が透けてみえている。




どこへいっても、たっぷり見かけるヒゲダニ科のヒポブス。