2017/09/11

アリ専用粘着トラップ

地べたに使い捨てコップを埋めて、カルピスなどを入れておけば、翌日は素敵なアリ入りスムージーが出来上がっているので、アリ調査には最高だ。
ところが、柔らかい地面がないと埋めにくいとか、保存剤を入れていないとあっという間に腐敗するとか問題点もいろいろある。
かなわないのが、ケモノやトリで、コップを引き抜いて散らかしたりする。唐辛子みたいな忌避剤を使用するという手もあるが、効果はイマイチ。

ヒアリ調査の対象となる場所は、どこでもだいたい、コンクリートやアスファルトなどの硬い地表が多いから、もとよりコップは埋められない。
だから、港湾地域のアリ調査には、一般的に小型の粘着板(ごきぶりホイホイ類似品)が使用されている。ところが、このホイホイ型粘着板にも問題点は多い。

何の対策もせずに設置すると、粘着面を汚す余計な付着物とムシの分離が困難、というか砂やゴミだらけでムシが見えないってことになりがち。
トラップを固定していないと、風で吹き飛ばされてたり、雨で流されたりする。
誘引餌は必須と思うが、多すぎると粘着面を覆ってムシがくっつきにくくなる。
避けがたいのが、粘着面に最初に付着したヤツが、後から来た別のヤツに食い散らかされたりする点だ。
港のコンテナヤードなんかでも、カラスやネコといった招かざる連中がいて、粘着板にちょっかいを出してくる危険もある。
そんなこんなで、ホイホイ型粘着板を野外で使用するのは意外と難しい。


目視調査できる人がたくさんいるのなら、日中、ちゃんと現場を実際に見てもらうほうが良いに決まってる。でもそんな人の数は限られているので、捕獲器調査に頼らざるを得ない。
なんといっても粘着板の優れた特徴は、人がいないときにもモニタリングをし続けてくれる点にある。

というわけで、野外に置いたホイホイ型粘着板の意義は高いとは思うけれど、もうちょっとアリ類を調べやすくできないものだろうか?
・誘引餌については、米国の文献では、砂糖は成績が良くなくて、たんぱく質を含むものやピーナツバターとか、トウモロコシ粉を調理したものなどが有用てなことが書いてあるけど、巣が形成されている場所付近での食物選択性のデータであり、とりあえず追従しているが、移動中の小集団にも適用できる方法かどうかはちょっと疑問もある。
グラニュー糖のほうは、餌が散らかってもアリを判別しやすいから、検査する時は助かる。どんな誘引餌がいいかは今後も検討を続けたほうがよさそう。

・台所用品の水切りネットをホイホイにかぶせたら、巨大ゴキブリや巨大ナメクジや落ち葉くらいは防げそう。
・環境にもよるだろうけれど、設置期間は短いほど捕獲種が劣化しにくい。暑い夏に調べるなら一晩設置で十分と思う。一週間くらいもするとゴキブリだのコオロギだのといったヨコシマな連中が粘着面で動けないアリをかじって、その残渣もナメクジがキレイにしてくれたりなんて危険が高まる。
・ホイホイ型ではなく、アリ調査専用品として市販されている「むしむし探偵団 ② アリシリーズ」を使用すると便利。テレビを見ていると、ヒアリの調査に実際に使用されている状況が写されていたりする。


この製品は、粘着面の上にネットがついていて、さらに黒い樹脂カバーが本体周囲を覆っている。アリが付着しやすい設計だ。
ネットの目開きは、アカカミアリの大型働きアリとかクロオオアリの頭幅より狭いが、クロオオアリなんかだとネットを咬み破って粘着面に付着することが確認されているので、実際の使用には問題ないだろう。
ネットにより大きなムシが捕まらないということは、先に捕まっている小型個体がかじられにくいので、同定する側としても作業しやすい。
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