ナガヒラタムシ Tenomerga mucida (Chevrolat, 1829)が多数入った紙包みを発掘した。
ナガヒラタムシは市街地でもたまにみかけるけれど、あまり普通にいる印象はない。日中は、死骸のように動きがないけれど、夜は活発に動き回り灯火に飛来したりする。
古い木造住宅で暮らしたことがある人ならば、この黒くて平べったい虫が、網戸に静止していたり、窓枠、玄関戸、柱などにピッタリくっついているところを見たことがあるかもしれない。
実は、この虫は床下で発生することがある。
紙包みのナガヒラタムシは、大東市の住宅街の木造住宅(一戸建て)で、平成10年6月に発生したもの。
私が現場に赴いて床下に潜ってみると、脱衣場の床組材が褐色腐朽菌にやられていた。ベイツガと思われる根太には、成虫の脱出口がみつかった。根太を材割りしてみると、ナガヒラタムシの幼虫も出てきた。
床組材腐朽の原因は、浴室排水の長期間にわたる漏水だった。
家のご主人は害虫大発生かとおののいていたが、ナガヒラタムシは木材害虫といえないと説明した。問題は腐朽菌が繁殖したことであり、腐朽材から出た虫は、むしろ住んでいる人に床下漏水を教えてくれた益虫といえる、と。
私はこの虫が家屋で発生しているところを2回みたことがあるだけだが、実際にはそれほど珍しいことでもなさそう。古い家でみたことがあるって人は、床組の腐朽菌による劣化を一応心配したほうがいいかも。
ついでに、いろいろ観察してみた。
雌雄の違いで分かりやすいのは、雄の複眼が大きいことと触角が長めなこと。
後翅を収納するときは末端をらせん状に巻いてたたむ。
チビナガヒラタムシに似ている。(始原亜目の特徴)
前胸の拡大。よく分からないがコレ(矢印)が前胸の背側縫合線というやつなんだろうか?
さやばねの透過光観察。花柄模様にみえる点刻列。
雄の交尾器(背面)は、一見筒状のようにみえるけれど、無理にグニョと広げてみると三片状になってて、こうしてみるとチビナガヒラタムシの交尾器に似た感じもする。
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