仕事が終わった現場からすぐ近くの海岸に移動して、海浜の生きもの観察をした。
兵庫南部の海岸は岩場が多くて、ニセササラダニ類の採集にはぴったりの場所だ。
寒風が吹きつける岩に顔を寄せ、0.3mm以下の生きものを探す苦行を3分ほど続けて、好奇心を刺激する生きものなど何もいないという貴重な知見を得た。
ふと、岩の間に溜まった砂に目がとまった。
砂の上の漂着ゴミを払いのけ、小さなポリ袋に一握りの海水を含む砂を入れて持ち帰った。
フランスあたりの海岸からヒモダニが流されて、瀬戸内海の内湾に漂着する確率はどれくらいだろう?
宝くじを買ったかのような、一時的幸福感にひたりながら仕事場に戻った。
ひどい脳天気ぶりである。ポリアンナだってここまでひどくない。
拾ってきた宝くじ的砂から、洗い出し法で微少な生物を抽出した。『JIS L 1920 』の表記に従えば「洗出し法」と送りがなが少し異なる。
洗い出し法は、室内塵からのダニ抽出では最強の方法で、野外の砂や落葉でも使える。伊藤立則著『砂のすきまの生きものたち』では、「洗い出し法に勝る、一般的な方法はない。」と断言されているくらいだ。
この方法は、簡単にいえば対象物を水で洗って、気持ち悪い色になった水を金属製のふるいでこして、ふるいに残った気持ち悪いものを観察するということである。ちなみに、ウチの事務所では比重選鉱法などと呼ばれている。
結果としては、ニョロニョロしたダニなどをみられるはずもなく、多数のウシオダニ科が得られただけだった。その中の数個体だけプレパラートにしてみた。剛毛数などを確認する時間がなかったけれど、絵合わせによる暫定的な同定をした。
優占種だった不明種1。Mictognathusの一種と同定した。ウシオダニらしい外観。ちなみにウシオダニ科というのは、海底や海岸のドロや砂の中、海草の表面などにいて、淡水域や地下水域でもみつかるダニ類。食性も肉食やら藻類食やらいろいろ。分類的位置は、ケダニ目:ハシリダニ上団:ウシオダニ上科:ウシオダニ科になっている。
1個体だけ得られた不明種2。Agauopsisの一種の幼虫と同定した。
前体部背面前縁中央に角状突起があり、角の先端に分岐がある。
カワダニ科のごとく、第1脚内側に発達した棘があるのもカッコイイ。日本の超稀種カワダニ科なんて、もちろんみたこともないけれど・・・。
カワダニといえば、オーストラリアのバロー島では、ある方法で大量採集が可能らしいって記事が1年ほど前にあった。
http://coo.fieldofscience.com/2013/12/meet-australias-newest-rake-legged-mite.html
ワシは信じへんからね。落ち葉掃除用ブロアーが、昆虫学者の必須道具だなんて話!
なぎさの砂中は、他にも細長いソコミジンコとか所属不明の無脊椎動物がいっぱいいる。見慣れない生きものをみて、近い動物群の名がゼンゼン思いつかないなんて、ちょっとした他の天体への旅行気分だ。
参考文献:Ilse Bartsch(2006): Halacaroidea (Acari): a guide to marine genera.
http://www.senckenberg.de/odes/06-06.htm
2014/11/23
2014/10/02
かゆがらせ
押し入れの隅って環境は、普通なら家屋害虫というレッテルを貼られている生きものたちにとってかなり安心なサンクチュアリといえる。
だが、ウチは違う。ヨメの掃除機がもたらす恐るべき環境破壊により、室内は生物の影が薄い。核戦争後の地球も、キットこんな様子だろうというくらいにサツバツとしている。
重い冬布団が入った袋の後ろ側なら、魔の手も伸びていないだろうと思ったが、残念なことにあまりホコリは溜まっていなかった。
一度破壊された自然の傷はなかなか癒えないものである。
それでも、懐中電灯の光りを斜めに照射して、合板上でかすかに動くヒラタチャタテの幼虫を数個体見つけることができた。
何かダニがいないかと思って、ヒラタチャタテの周囲のホコリを吸虫管で採集した。
ホコリを実体顕微鏡で調べると、ヒョウヒダニ類の死骸のカケラに混じって、やっとのことでミナミツメダニ雄の死骸が1つだけみつかった。
絶滅危惧種として保護してやりたい心境である。
室内に生息しているツメダニ類が、ヒトの皮膚を刺す理由を考えてみた。
ヒトの組織から吸汁して発育するわけでもない種が、なぜヒトを刺すのか?
上皮の外層部分に、ほんの微量注入されるツメダニの唾液ごときに、どうしてヒトの体がそんなに過激に反応することがあるのか・・・・・、本当におかしな話だ。
上皮の外層部分に、ほんの微量注入されるツメダニの唾液ごときに、どうしてヒトの体がそんなに過激に反応することがあるのか・・・・・、本当におかしな話だ。
ツメダニ症は偶発的な刺咬によるものに過ぎないと思うし、個体数が少ないと問題にならないという考えを変えるツモリもない。
でも、カユミをもたらすのは、実のところツメダニ類の戦略かも知れない。
動物は痒くなると皮膚を掻く。室内塵のなかで剥離上皮の割合が高まれば、ヒョウヒダニ類やコナダニ類が増えやすくなるだろう。
ツメダニ類も結果的に、美味しい丸ぽちゃコナダニ団を、より多く頂くことができるチャンスが増えるはずだ。
動物の皮膚を間接的に利用することは、ツメダニ類の進化にも重要な関わりがあると思う。
動物の皮膚利用を究極にまで高めたのがケモノツメダニ類といえるだろう。
もはやコナダニ団を捕食する必要がなくなって、カサブタだらけの皮膚に住み着いて、細胞間質液を直接利用する道を歩んでいるヤツラだ。ヒトを宿主をするケモノツメダニは、幸いにも見つかっていない。
ツメダニが生息している室内であっても、痒くなりにくい対策があればいいなと思う。ツメダニの唾液成分をよく調べてみるという方向性もよさそう。
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